ギター

ほつれかけてた糸が完全に、切れてしまった。
ギターに対する情熱がなくなってしまった。もともとそんなに熱くなっていたわけではないけれど、ここ数年はずっと、ギターがうまくなりたいと思っていたし、もっといいギターを買いたいと思っていた。だからPRSを買うために積み立てをしていたし、PRSに見合う腕をつけようと頑張った。でも、頭の中の何かの糸が完全に、切れた。
ギターのレッスンがあまり面白くなくなったのはいつからだろうか。始めたときは本当に面白かった。先生はいい人だし面白いし、スケールを覚えていって、自分がアドリブでソロが弾けるというのが信じられなかった。うれしかった。ギターってこんなに面白いものだったのかと感動した。
だけど、段々と自分が落ちこぼれになっていくのがなんとなくわかった。先生は最初、『今わからなくてもいいよ。あとでわかるようになるから。』と言っていたけど、結局わからないことが多くなってきた。ダイアトニックコードとかスケールとかがなかなか覚えられなかったりして、レッスンの時に『じゃあここのコードで使えるスケールは?』とか聞かれても全然答えられなくて、他にも生徒がいるのに先生は絶対に僕をあてるから僕は覚えようと思うんだけどやっぱりなかなか覚えられなくて、なんとなく負い目をかんじつつレッスンを受けてた。それでもレッスンに行けば、スペイン人の友人と話すことができたから、それがとても楽しかったから僕はレッスンに行き続けた。彼と話すことがすごく楽しかった。
でもいつだっただろう、ここに書いたと思うが、彼は今年の5月か6月頃に辞めてしまった。しかも僕がレッスンをサボって野球なんかを観に行っていた時で、最後に彼に何も言えずにお別れとなってしまった。たぶんそのあたりから、ちっとも面白くなくなった。
もちろんレッスンを受けているのは彼と僕だけではなく、他にもいた。しかしその他の人というのは何があわないのかわからないけど、イマイチ仲良くする気にはなれなかった。趣味が合わないのになんとなく話をあわせてくれようとする大学生、挨拶もろくにできないOL、人の話が聞けずに自分の話ばかりする高校生、高血圧のおじさん。結局彼らとはアドレスひとつ交換してない。
僕はギターがうまくなりたくてレッスンをうけてた。大学のサークルを一ヶ月で辞めたのだってギターがうまくなりたかったからだった。ちっともうまくなかった僕をつかまえて『お前うまいな。』と言ってきた人を見て、こんなところにいちゃ腐るだけだと思った。絶対にうまくなってやると思った。
なのに、それから1年以上経つのに、僕はちっともうまくなってない。
これも以前に書いたと思うのだが、僕は『お前は〜がうまくてはいいよなぁ』と言うやつが大嫌いだ。その『〜』がうまい人は人の何倍も何十倍も努力してうまくなったわけで、なにもせずに『〜』がうまくなったわけではない。自慢するわけではないが、僕はよくテスト前に『何もやらなくても(テストが)出来る人はいいよね』と言われた。でも僕はなにもやってなかったわけじゃなく、テスト前だけはメチャクチャに勉強してた。だからそんなことを言われるたびに腹が立ってたし、そのようなことは絶対に言わないように、思わないようにしていた。
でも、向き不向きというのがあるのは認める。でも『向き不向き』というのは先天的な才能とかそういうものではなくて『その対象に対してどれだけ集中できるか』というものだと思う。サッカーが好きな人はサッカーへの、勉強が出来る人は勉強への、そしてギターがうまい人はギターへの集中力が長けているということだと思うのだ。そして、自分にはギターへの集中力に欠けていた。
そんなことはわかっていた。でも気づかないふりをしていた。もともと飽きっぽい性格の僕は何をやっても長続きしなくて、小学校の時の野球は半年もたなかった。テニスだってテニス部の部長までつとめたのに中学の三年でやめた。高校の体操部だって3年間在籍していたものの、ちゃんと活動したのは一年となかった。そんなことも『本当に自分が好きなことに出会っていないからなんだ』と誰に対してでもなく言い訳をしていた。それでも、バンドは長かった。高校の一年生から始めて、高校の間はずっと続けてた。好きなんだなと思った。一生の趣味になればいいなと思った。
だけど、どっちかというとギターがうまい人を見る方が好きだった。自分が弾くよりも、スティーブヴァイのDVDを見る方が好きだった。あんなふうに弾けたらなと思って、でも思うだけでスティーブヴァイの曲にはほとんど手をつけてなかった。
そして結局、そのごまかし続けてきた集中力も、切れた。
『ギター弾けるの?すごい!かっこいい!』といわれたことが数回ある。でも僕はそれを素直に受け取れなかった。僕がヘタクソだからっていうのもあるし、僕の中で持論があったからだ。『ギターを弾ける人がかっこいいんじゃなくて、ギターがうまい人がかっこいい。ギターに限らなくても、何かの道に長けている人はかっこいい。』
ギターが弾けるやつなんて世の中には腐るほどいる。そしてその人たちの8割くらいは齧ったことのある程度だろう。弾き語りが出来るくらいで『ギターが弾ける』なんて言ってほしくなかったし、僕はそんな中途半端をすごくかっこわるいと思った。中途半端に弾けるくらいなら弾けない方がマシだとも思った。
でも、今の僕はまさにそれだ。


ギターに対する情熱がなくなってしまった今、バンドに対するやる気も一気にうせた。ギターがうまくなりたかった僕は、バンドのメンバーにムリを言ってしばらくボーカルをやめてギターに専念させてもらっていたのに、そのギターもやる気がなくなった。本当に申し訳ないと思う。本当に勝手だとは思うけど、近いうちにやめさせてもらった方がいいかもしれない。こんな気持ちの人間がいると、いいライブなんて出来るはずがない。


バンドのメンバーへ。
このブログを読んでいたら、是非教えてください。本名は明かしていないけど、もし読んでいたら、文体や今までの日記でわかるでしょう。特にギタリストのM。あなたははてなを利用しているからこのブログを発見する可能性が他の2人よりも高いはずです。最近はあまり更新していないようだけど、あなたのブログは3年くらい前から知っていました。黙っていてごめんなさい。でも、これを読んでいたら是非意見をください。とてもいい関係で4年間もバンドをやらせてもらってすごく楽しかったけど、20歳を過ぎた今、そろそろ僕らもこれからについて話し合った方がいいのかもしれません。